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野球で肘が痛い、肩が痛い

離断性骨軟骨炎

離断性骨軟骨炎

離断性骨軟骨炎とは

野球などによる投球障害の中でも特に重症で、見逃してはならないのは、離断性骨軟骨炎という肘の病気です。
投球時には必ず肘の外側には骨と骨がぶつかり擦れるような力が加わります。
投げすぎ、体が硬い、投球フォームが悪いなどの影響で、上記の力が強くなることで離断性骨軟骨炎という病気が発症する可能性があります。
上腕骨という骨の小頭(しょうとう)という部分の骨と軟骨が傷んでしましまい、この状態を離断性骨軟骨炎といいます。

離断性骨軟骨炎の症状

肘の外側の痛み、肘の曲げ伸ばしの制限が多いです。
特にピッチャー、キャッチャーで起こることが多い病気です。

離断性骨軟骨炎の診断

一番多く用いられるのはレントゲン検査ですが、進行した状態であればレントゲンでわかりますが、初期の段階ではレントゲンに映らず見逃されることがあります。
この場合は、MRI検査や超音波(エコー)にて診断を行います。
エコーであれば、レントゲンでわからない病変も描出できる可能性があります。
また、MRIは日にちを変えて何度も繰り返し行うことができないのに対して、エコーであれば何度も繰り返し検査を行うことが可能です。

離断性骨軟骨炎の治療

離断性骨軟骨炎がどの程度すすんでいるかと患者さんの年齢によって変わります。
病状が進んでいる、あるいは患者さんが中学校高学年くらいで骨端線(いわゆる成長線)がもうなくなっている場合は、手術になります。
当院では手術はできませんので、他院に紹介となります。
病状が初期の段階で、かつ患者さんが小学生や中学校低学年で骨端線が残っている場合は、手術せずに治療することができる可能性があります。
手術しない方法は、とにかく投球の中止肘の絶対安静です。
治癒までにかかる時間は患者さんによって様々ですが、半年~1年くらいかかります。
手術せずに診ていても、半年くらい経過して全く治ってこない場合は、手術の可能性があります。
体の硬さ、投球フォームの悪さが原因となるため、投球できない間はストレッチング等肉体改造のリハビリに徹底的に取り組んでいただきます。

離断性骨軟骨炎の予後

放置した場合は、くっつかなかった骨が肘の関節内に残ってしまい、痛みや肘の動く範囲の制限が残ります。
最終的には変形性肘関節症という、肘の骨の変形・軟骨のすり減り、曲げ伸ばしの角度の制限が強い状態になり、重大な障害が残ります。
手術せずに治癒した、あるいは手術でも軽い手術ですめば変形性肘関節症まで移行することは少なく、その後も野球を続けることできます。
野球少年の肘の痛みで、特に肘の外側に痛みがあるときは、我慢せずにできる限り早く受診しましょう。

野球肘(内側型野球肘)

野球肘(内側型野球肘)

野球肘とは

投球時には必ず肘の内側には引っ張られる力が加わります。
投げすぎ、体が硬い、投球フォームが悪いなどの影響で、上記の力が強くなることによって発生します。
大人の場合はこれが肘の内側側副靭帯断裂という形で現れてきます。
しかし、骨が未発達のお子さんの場合は、内側側副靱帯がくっついている骨が引っ張られて、骨端線(いわゆる成長線)の損傷・骨の分節化(割れてしまう)という症状が起こってきます。

内側型野球肘の症状

肘の内側の痛みが多いです。
炎症が強い人は、肘の曲げ伸ばしの制限が出ることがあります。

内側型野球肘の診断

レントゲン検査で、骨端線という部分の離開(距離が離れていること)や骨が割れている所見が見られます。
超音波(エコー)も診断に役立ちます。

内側型野球肘の治療

手術を要することはありません。
多くの場合は、4週間程度の投球中止の後、体の硬さをストレッチングで改善することから開始し、投球フォームチェック→キャッチボール→ピッチングと段階的にリハビリを進めていくことで約3ヶ月程度で完全復帰が可能です。
ただ、成長期の体が変わっていく時期におこる病気であり、再発も多いため、リハビリ卒業後もストレッチングをしっかり行って頂く必要があります。

内側型野球肘の予後

非常に良好です。
何も症状なく治る場合が多いですが、前述の通り再発もありますので、ストレッチングはしっかり行ってほしいと思います。

野球肩(リトルリーグ肩)

リトルリーグ肩とは

小学生や中学生低学年くらいのお子さんで、投げ過ぎだったり、体が硬かったり、投球フォームが悪かったりすると、肩に負担がかかって上腕骨の骨端線(いわゆる成長線)が損傷してしまいます。

リトルリーグ肩の症状

投球時の肩の痛みが主です。
特に肩の外側の痛みを訴えることが多いと思います。

リトルリーグ肩の診断

レントゲン検査で行います。
骨端線の離開(距離が離れていること)が確認できれば診断確定です。
また、超音波(エコー)も有用です。
エコーでは骨端線周辺に黒い領域が見られます。
これは出血を表しており、経時的に検査することで黒い領域の縮小が見られます。
レントゲンでわかりにくい場合は、MRIを行うこともあります。

リトルリーグ肩の治療

4週間程度の投球中止の後、体の硬さをストレッチングで改善することから開始し、投球フォームチェック→キャッチボール→ピッチングと段階的にリハビリを進めていくことで約3ヶ月程度で完全復帰が可能です。
肘の場合と同様に、下半身のストレッチングやフォームチェック等リハビリをしっかり行う必要があります。

リトルリーグ肩の予後

予後は非常に良好です。
特に症状なく復帰することが可能です。

文責 上田 英範
(日本整形外科学会整形外科専門医)

院長 上田 英範