診療案内

MEDICAL

背中が曲がってきた(骨粗鬆症)

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症により、転んで骨折を起こす女性

骨粗鬆症とは、骨がもろくなって軽い外傷で骨折を起こすようになった疾患です。
骨粗鬆症は主に高齢の女性に多いため、「仕方がないんじゃないの?」と思われる方が多いですが、れっきとした「病気」です。
「病気」であるからには治療をしなければなりません。

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症自体には症状はありませんが、尻もちなどの軽い力で骨折を起こしてしまいます。
骨折を起こす部位によっては、手術が必要であったり、手術をしても寝たきりになったりする可能性があります。
尻もちなど軽い外傷で骨折をしたら骨粗鬆症の可能性は高いです。
また、若い頃に比べて身長が縮んでいたり、背中が曲がって来たりして気付くことがあります。

骨粗鬆症の診断

骨粗鬆症であるかは、DXA(DEXA、デキサ)法という方法を用いたレントゲンの機械で骨密度を測定することで行います。
若い人(20~40代くらい)の骨密度の平均値を100%とし、70%未満であれば骨粗鬆症と診断されます。

骨粗鬆症の分類

骨粗鬆症の原因としては、原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症とがあります。

  • 原発性は加齢によるもの、閉経によるものなど
  • 続発性は何らかの病気や薬の副作用によるものなど

と考えてください。
骨粗鬆症の多くが原発性で、加齢・閉経によるものです。
閉経により女性ホルモンの量が減ると、女性ホルモンの「強力に骨が壊れるのを防ぐ作用」がなくなるため、骨密度が下がっていきます。
このため、骨粗鬆症は圧倒的に男性よりも女性に多い病気となりますので、女性の方は50歳くらいから骨密度検査を行っていただくと良いと思います。

骨粗鬆症治療時の採血

当院では骨粗鬆症治療を行う前に採血を行っております。
その理由としては、
①骨代謝マーカーを測定するため
②血液中のビタミンDの濃度を測定するため
です。

①骨代謝マーカーを測定するため

骨も新陳代謝しており、壊れてはその分作られてを繰り返しております。
骨が壊れる部分を測定したものを骨吸収マーカー、骨が作られる部分を測定したものを骨形成マーカーといいます。
この2つを測定することで、骨がどのような状態にあるのかを推測することができます。
いずれの数字も高い場合は高回転型といい、骨が壊れるのを防ぐ薬(骨吸収抑制薬)を使用することを検討します。
また、いずれの数字も低い場合は低回転型といい、骨を作る薬(骨形成促進薬)を使用することを検討します。
このように骨代謝マーカーを測定する意義としては、使用する薬を選ぶ際の手がかりになるということがあります。
また、薬によっては、その薬が効いているかを判定する指標にもなります。

②血液中のビタミンDの濃度を測定するため

ビタミンDが体の中で不足すると腸管からのカルシウムの吸収が減って、骨に行くカルシウムの量も減ってしまい骨粗鬆症になっていきます。
ご高齢の日本人は多くの方がビタミンD不足と言われております。
この数字が低い方は、ビタミンDの補充を検討することになります。

骨粗鬆症の治療に関して

骨粗鬆症の治療には、運動療法、食事療法、薬物療法等があります。
よく「食事だけでなんとかなりませんか?」ということを聞かれますが、なかなか難しいです。
運動療法、食事療法、薬物療法の3つとも行って治療するのが良いであろうと思います。
そして、「いつまで治療を続ければ良いの?」ということもよく聞かれますが、ガイドラインには骨密度が70%を超えるまであるいは5~6年と書いてあるのですが、私個人はずっと続ける!くらいの気持ちでいてほしいとよく説明します。
そのくらいのモチベーションを持っていた方が治療がうまくいきやすいです。

運動療法に関して

骨に適切な刺激を加えないと骨もサボってしまい、骨密度が下がってしまいます。また、骨粗鬆症の方は尻もちなどの軽い外傷で骨折を起こすため、転倒予防のための運動も大切です。
主にやっていただきたいのは片足立ち、スクワットになります。
年齢と状態によりできる運動は異なると思いますので、できる範囲でやってみてください。
これにウォーキングなどの有酸素運動を取り入れていくと良いと思います。

食事療法に関して

食事療法に関してですが、カルシウムだけでなく、ビタミンDタンパク質を十分に摂取することが大切です。
カルシウムは、1日700~800mg摂取することが推奨されております。
ビタミンDに関しては、1日10~20μgの接種が推奨されております。
また、ビタミンDは食べるだけでは使える形になっていないため、日光浴が必要です。
夏場は1日15分程度、冬場は1~2時間程度肌のどこでも良いので、日光に当てる必要があります。(日焼け止めはNGです。)
タンパク質に関しては、体重(kg)×1gのタンパク質を1日に摂取するのが良いと思います。
例えば、体重40kgの人なら、タンパク質1日40gを目標にしてみてください。

薬物療法に関して

骨粗鬆症の薬には、①骨形成促進薬②骨吸収抑制薬、③それ以外のものがあります。

①骨形成促進薬に関して

骨を作る薬になります。
弱った骨を新しい質の良い骨に作り替えるようなイメージの薬です。
現在日本で使える骨形成促進薬は、テリパラチドという薬があります。

②骨吸収抑制薬に関して

今ある骨を頑丈にして壊れにくくするようなイメージの薬です。
SERM(サーム)ビスホスホネート製剤デノスマブといった薬になります。
①と②の効果を合わせ持つ薬として、ロモソズマブという薬があります。

③それ以外に関して

ビタミンD製剤があります。骨の代謝を正常な状態に改善します。
年齢、骨密度、採血などを考慮してどの薬を選択するか検討することになります。
詳しくは担当の先生と相談すると良いと思います。大切なことは続けること、治療を勝手に中断しないことです

骨粗鬆症治療薬の副作用に関して

顎骨壊死

過去は骨粗鬆症治療薬の副作用と言われておりましたが、現在は、顎の骨の骨粗鬆症に歯周病などが組み合わさリ、慢性的な骨の炎症(慢性骨髄炎)が起こることで発症すると言われております。
予防としては、口の中をきれいに保つこと、定期的に歯科に通うことが重要です。
発症率は非常にわずかです。

文責 上田 英範
(日本整形外科学会整形外科専門医)

院長 上田 英範