手が痛い
関節リウマチ
関節リウマチとは
自分の免疫が自分に攻撃を仕掛けてくる原因不明の疾患です。
関節に炎症が起こり、関節の腫れや痛みが生じます。
無治療で放置した場合、関節が破壊されていきます。
男性よりも女性の方に多い疾患です。
高齢者の病気と思われがちですが、40代くらいの若い方でも起こります。
関節リウマチの症状
初期は手の指、足の指、手首などの小さな関節に、腫れや痛みが起こります。
(指の第1関節の腫れ、変形、痛みのときは、関節リウマチでないことが多いです。事項の「ヘバーデン結節」をお読みください。)
朝の手のこわばり感も多く認めます。
進行してくると、膝、肩、股関節などの大きな関節の腫れや痛みを起こします。
関節リウマチの原因
原因は不明です。
遺伝的要因、喫煙、歯周病などが関連しているとも言われておりますが、はっきりしておりません。
関節リウマチの診断
持続する手指や足指の関節の痛み、腫れを見たら疑います。
採血にて、リウマトイド因子や抗CCP抗体という項目が上がることが多いですが、必ず上がるわけではないので注意が必要です。
その他に、CRP、血沈という体の中の炎症を表す項目や、軟骨が壊れるときに上がる項目であるMMP-3という項目が上昇することがあります。
関節リウマチの診断は、症状のある関節の数と部位、リウマトイド因子や抗CCP抗体の上昇、CRPや血沈の上昇、持続期間をスコアリング化して行います。
画像検査ではまずレントゲンを行います。
レントゲンでは骨びらんという関節の四隅が虫食い状に黒くなる所見が特徴的ですが、初期の関節リウマチではこの所見を認めることは少ないです。
最近では、厳密には関節リウマチの診断基準を満たさない場合でも、超音波(エコー)検査を行って関節の腫れ、炎症所見を確認することで診断となることもあります。
関節リウマチの治療
一昔前までは、関節リウマチは治らない病気でしたが、近年は様々な薬の登場で病気の勢いを抑えることができるようになってきました。
関節リウマチの薬の中でも、メトトレキサート(MTX)という薬はとても大切な薬です。
この薬が飲めるか飲めないか(薬の副作用や体の状態により飲めない場合があります)は治療法を決める上で非常に大切なポイントとなります。
もし、メトトレキサートで効果不十分あるいは何らかの原因で飲めない場合は、生物学的製剤を使用し治療します。
近年は生物学的製剤の他に、JAK阻害薬という薬も使われるようになってきております。
これらの薬は重大な副作用を起こす可能性がありますので、採血やレントゲンなどで定期的な経過観察が必要です。
関節リウマチと診断されたら
メトトレキサートの登場で関節リウマチの患者さんの予後は大きく変わってきました。
診断されてもきちんと治療することで病気の勢いを抑えることができます。
ぜひお近くのリウマチ科を受診してみてください。
ヘバーデン結節
ヘバーデン結節とは
女性の方に多く起こってくる指の第1関節の変形です。
画像上は変形性関節症の見た目(軟骨のすり減り、骨の変形)を取り、関節リウマチとは異なります。
加齢性変化と思われておりますが、原因は不明です。
ちなみに、第2関節にも起こることがあり、この場合はブシャール結節といいます。
ヘバーデン結節の症状
初期は第1関節の腫れや痛みのみですが、進行してくると関節の変形、曲がりにくさが起こってきます。
まれに、水ぶくれ(ミューカシスト)が起こることがあります。
ヘバーデン結節の原因
加齢性変化と思われておりますが、原因不明です。
ヘバーデン結節の診断
レントゲンで、第1関節の軟骨のすり減り骨の変形を認めれば診断確定となります。
ヘバーデン結節の治療
治療は非常に難しいことが多いです。
対症療法で痛み止めや塗り薬を使用します。
教科書的には手術療法もありますが、現実的ではありません。
最近は、「エクオール」というサプリメントが初期のヘバーデン結節に効果があるのではないかと言われてきております。
3ヶ月ほど試して効果があれば、継続して使用すると良いと思われます。
腱鞘炎・ばね指
腱鞘炎・ばね指とは
指を曲げる筋肉の腱の周辺には腱鞘という鞘の部分があり、その部分に何らかの原因で炎症が起こることで症状が出ます。
腱鞘炎・ばね指の症状
親指、中指に多く症状が出ることが多いです。
指の付け根の手のひら側の痛みや腫れが出ます。
まれに第2関節付近の症状を訴える方もいらっしゃいます。
症状が進行すると、指を曲げ伸ばししたときに引っかかるようになります。
そのようになると、「ばね指」と呼ばれます。
さらに進行すると、指の曲げ伸ばしができなくなります。
腱鞘炎・ばね指の原因
指をよく使う仕事や趣味の方は起こりやすいです。
また、糖尿病、透析中、関節リウマチの方は起こりやすいです。
腱鞘炎・ばね指の診断
指の付け根の部分に痛みや腫れがあり、さらに指を曲げ伸ばしした時の引っかかりがあれば診断できます。
補助診断として、超音波(エコー)で腱鞘が腫れている像を確認することがあります。
腱鞘炎・ばね指の治療
まずは、手の使いすぎを避けていただき、痛み止めや塗り薬を使用します。
それで改善を認めない場合は、指の付け根にステロイド注射を行います。
注射を数回打っても改善しない、あるいは指の曲げ伸ばしが全くできない場合は、手術になることがあります。
ドゥ・ケルバン腱鞘炎
ドゥ・ケルバン腱鞘炎とは
厳密には手ではなく、手首の親指側にある腱鞘(腱が通るトンネル)が炎症を起こす病気です。
それにより手首の痛みや腫れが生じることがあります。
ドゥ・ケルバン腱鞘炎の症状
手首の親指側に痛みや腫れ、時にしこりが現れます。
親指を動かすと痛みが増すことがあり、特に握る動作や物を掴む動作で疼痛が強くなります。
ドゥ・ケルバン腱鞘炎の原因
親指の過度な使用により起こります。
親指を動かす腱(長母指外転筋腱、短母指伸筋腱)が通過する腱鞘に炎症が生じ、痛みや腫れを引き起こします。
ドゥ・ケルバン腱鞘炎の診断
親指をよく使う職業に従事していたり、手首の親指側に痛みと腫れがあれば疑います。
その上で、親指を握り込んで、手首を小指側に曲げるテスト(Eichhoffテスト、Finkelsteinテスト)で痛みが出ればほぼ間違いありません。
診察で診断が難しい場合は、超音波(エコー)を行い、腱鞘が腫れていることを確認することもあります。
ドゥ・ケルバン腱鞘炎の治療
親指の安静を指示します。
その上で、内服や外用を使用します。
それでも改善がない場合は、疼痛部位にステロイドの注射を行います。
注射でも改善がない場合は、手術が行われますが、まれです。
ガングリオン
ガングリオンとは
関節の近くにできる腫瘤(できもの)です。
中に黄色いゼリー状の中身がたまって、皮膚がぼこっと膨らんで見えます。
良性腫瘍ですので、悪いものではありません。
ガングリオンの原因
なぜ起こるのかははっきりとはわかっていません。
関節包(関節を包む袋)や腱鞘(腱をつつむ鞘)の部分が変性(形が変わって)して起こると言われます。
ガングリオンの症状
内部にゼリー状の中身がたまって膨らみます。
整容面で悪いという問題点はありますが、多くの場合痛みはありません。
指の付け根にできた場合は、当たると痛いということがあります。
まれに手首の手のひら側にできた場合、神経を圧迫してしびれと痛みが起こる可能性があります。
ガングリオンの診断
レントゲンでは映らないため、診断不可能です。
超音波検査(エコー)で好発部位に、特徴的な黒い腫瘤が見えた場合、ほぼガングリオンです。
まれにMRI検査が必要になることがあります。
間違いなくガングリオンと確定するためには、腫瘤を針で刺して、ゼリー状の黄色い中身が引けてくることを確認する必要があります。
ガングリオンの治療
痛みやしびれがなければ、治療する必要はありません。
しかし、痛みやしびれがあったり、見た目の悪さが気になるのであれば治療が必要です。
治療としては、針で刺して中身を吸引したり、引けて来ない場合は周囲から押しつぶします。
これで一時的には引っ込みますが、再度たまることがほとんどです。
何度もたまる、痛みやしびれが強い場合は手術で摘出となります。
しかし、ガングリオンは「根が深い」ため、手術で切除しても再発率が高いです。
そのことも理解して手術に望まなければなりません。
文責 上田 英範
(日本整形外科学会整形外科専門医)