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大谷翔平選手の怪我 肩関節唇損傷について

医療

こんにちは!
西尾市一色町の整形外科クリニック うえだ整形外科クリニック 院長 上田英範です。

メジャーリーガーの大谷翔平選手が肩関節唇損傷で手術をしたというニュースを見ました。
【MLB】ドジャース・大谷翔平が左肩関節唇断裂の修復手術を受ける スプリング・トレーニングには間に合う見込み

「関節唇」というものを聞いたことがない方も多いのではないかと思います。
本日は関節唇損傷に関して、私なりにまとめてみたいと思います。

関節唇損傷とは?
関節唇は、肩関節の安定性を保つために重要な軟骨のような組織です。
肩関節はそもそもとても不安定な関節です。
この関節唇が損傷することで、肩の痛みや不安定感、動かせる範囲の制限などを引き起こします。

大谷翔平選手のケースに関する私なりの考察
「肩の亜脱臼」と報道されておりましたが、おそらく肩が「脱臼」したのではないかと思います。
関節の亜脱臼とは、関節が部分的にズレている状態
関節の脱臼とは、関節が完全にズレている状態
とご理解ください。
肩関節が脱臼した際に、関節唇損傷が発生したと考えられます。
(肩関節脱臼は、ほとんど前方脱臼という脱臼の形態になります。
前方脱臼とは、上腕骨が肩の前側に移動するような脱臼です。
上腕骨が前方に移動する際に周辺の組織を傷つけてしまいます。
傷つけられる組織の一つが関節唇です。)

関節唇損傷の診断
関節唇損傷の診断は主にMRI検査で行われます。
その前に問診で受傷した原因を把握しておくことも重要です。

関節唇損傷の治療
関節唇損傷の治療法は、損傷の程度や患者さんの状態(痛み、目指しているパフォーマンス)によって異なります。

保存療法(手術しない治療)
薬物療法: 消炎鎮痛剤(痛み止め)の内服、肩の関節に注射を打つ(ステロイド注射)など
物理療法: 温熱療法、超音波療法など
運動療法: 肩の動きを改善するための運動、筋力訓練、投球障害によるものであった場合は肩に負担のかからない投球フォームの習得

手術療法:
関節鏡手術: 関節唇を縫合したり、損傷部分を切除したりする手術になります。

大谷翔平選手が受けたと思われる手術の内容
大谷選手の手術は、関節鏡手術という最小限の傷ですむ方法で行われましたと予想されます。
この手術では、小さなカメラと手術器具を関節内に挿入し、損傷した関節唇を修復します。

大谷翔平選手の復帰までの道のり
リハビリは、肩の可動域の回復、筋力強化、疼痛軽減などを目的とし、段階的に行われます。

初期: 手術直後は、肩の安静と炎症を抑えるための治療が中心となります。
中期: 少しずつ肩の動きを戻すための運動を行います。
後期: 筋力強化やスポーツ動作への復帰を目指します。
リハビリ期間は、個々の回復状況によって異なりますが、プロスポーツ選手の場合でも、通常6ヶ月から1年程度かかります。

手術後、大谷選手はリハビリテーションに専念することになると思われます。
報道によるとスプリング・トレーニングには間に合うとなっています。
11月上旬に手術を受けたとすると、3~4ヶ月で復帰することとなります。
通常よりも早い復帰が想定されているようです。
理由はとしては、手術したのは投球しない方の左肩であるから、手術がうまくいったから、などが想像されます。

関節唇損傷からの復帰における課題
関節唇損傷からの復帰には、いくつかの課題があります。

再発のリスク: 手術をしても、再発のリスクはゼロではありません。
パフォーマンスの低下: 手術をしても、手術前と同じパフォーマンスを取り戻せるとは限りません。
精神的な負担: 長期間の治療やリハビリは、精神的な負担も大きくなります。

関節唇損傷は、適切な治療とリハビリテーションによって回復できる可能性があります。
しかし、プロスポーツ選手のように高いレベルで競技を続けるためには、手術やリハビリが必要となる可能性があります。

いかがでしょうか。
少しでも参考になれば幸いです。

では、また!

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執筆者

上田 英範

うえだ整形外科クリニック 院長

2021年、愛知県西尾市にうえだ整形外科クリニックを開院しました。
地域社会に貢献するため、医師として患者さんに信頼していただける医療を心がけております。

経歴
金沢医科大学卒/名古屋医療センター研修医/聖霊病院整形外科勤務/なかざわ記念クリニック整形外科勤務
保有資格
日本整形外科学会専門医/日本整形外科学会リウマチ医/日本整形外科学会スポーツ医/日本整形外科学会運動器リハビリテーション医
所属学会
日本整形外科学会/日本リウマチ学会/日本骨粗鬆症学会/日本整形外科超音波学会/日本リハビリテーション医学会/日本整形内科学研究会