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野球などの投球障害について ①離断性骨軟骨炎

医療

こんにちは!
西尾市一色町に令和3年8月4日に新規開院予定のうえだ整形外科クリニック 院長 上田英範(ひでのり)です。

本日は、疾患の説明シリーズで、投球障害に関してです。
これから数回に渡って投球障害に関する説明をしていこうと思います。
日本整形外科学会 野球肘

西尾市は野球の盛んな地域で、西尾市一色町、吉良町、寺津町、中畑町、平坂町、西幡豆町、東幡豆町、矢田地区、福地地区、西尾地区、米津地区などに多くの小学生、中学生野球チームがあります。
また、西尾市以外にも隣接した碧南市、安城市などにも野球チームがあります。
投球障害を診察することができる医師が少ない地域ということもあり、今まで多くの患者さんを診察させていただいたように思います。

投球障害の中でも特に重症で、見逃してはならないのは、離断性骨軟骨炎という肘の病気です。
投球時には必ず肘の外側には骨と骨がぶつかり擦れるような力が加わります。
投げすぎ、体が硬い、投球フォームが悪いなどの影響で、上記の力が強くなることで離断性骨軟骨炎という病気が発症する可能性があります。
上腕骨という骨の小頭(しょうとう)という部分の骨と軟骨が傷んでしましまい、この状態を離断性骨軟骨炎といいます。

症状としては、肘の外側の痛み、肘の曲げ伸ばしの制限が多いです。

特にピッチャー、キャッチャーで起こることが多い病気です。

診断としては、一番多く用いられるのはレントゲン検査ですが、進行した状態であればレントゲンでわかりますが、初期の段階ではレントゲンに映らず見逃されることがあります。
この場合は、MRI検査が用いられることも多いですが、私の場合はその前に超音波(エコー)にて診断を行います。
エコーであれば、レントゲンでわからない病変も描出できる可能性があります。
また、MRIは日にちを変えて何度も繰り返し行うことができないのに対して、エコーであれば何度も繰り返し検査を行うことが可能です。

治療としては、離断性骨軟骨炎がどの程度すすんでいるかと患者さんの年齢によって変わります。
病状が進んでいる、あるいは患者さんが中学校高学年くらいで骨端線(いわゆる成長線)がもうなくなっている場合は、手術になります。
当院では手術はできませんので、他院に紹介となります。
病状が初期の段階で、かつ患者さんが小学生や中学校低学年で骨端線が残っている場合は、手術せずに治療することができる可能性があります。
手術しない方法は、とにかく投球の中止、肘の絶対安静です。
治癒までにかかる時間は患者さんによって様々ですが、半年~1年くらいかかります。
「そんなにかかるの!?」と言われることがありますが、そんなにかかります!
手術せずに診ていても、半年くらい経過して全く治ってこない場合は、手術の可能性があります。

前述の通り体の硬さ、投球フォームの悪さが原因となるため、投球できない間はストレッチング等肉体改造のリハビリに徹底的に取り組んでいただきます。

予後ですが、放置した場合は、くっつかなかった骨が肘の関節内に残ってしまい、痛みや肘の動く範囲の制限が残ります。
最終的には変形性肘関節症という、肘の骨の変形・軟骨のすり減り、曲げ伸ばしの角度の制限が強い状態になり、重大な障害が残ります。
手術せずに治癒した、あるいは手術でも軽い手術ですめば変形性肘関節症まで移行することは少なく、その後も野球を続けることできます。

離断性骨軟骨炎は本人もご両親も監督やコーチにも気付かれないことが多いです。
なぜここまで放置したのだろうかと思う症例も少なくありません。
以前のブログでもお話したとおり、検診を実施して進行していない状態で見つける必要があると考えております。
エコーを使用すれば、簡便に、短時間で、鋭敏に離断性骨軟骨炎を発見することが可能です。
うえだ整形外科クリニックが中心となって、エコーによる野球検診を普及させていきたいと考えております。
西尾市で離断性骨軟骨炎で手術する患者さんを0にするように活動していきたいと考えております。

また明日以降、野球少年に起こりやすい肘、肩の障害の続きを説明していきたいと思います。

では、また!

うえだ整形外科クリニック 医師 上田英範