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四十肩・五十肩(肩関節周囲炎、凍結肩)について

医療

こんにちは!
西尾市一色町の整形外科クリニック うえだ整形外科クリニック 院長 上田英範です。

本日の話題は「四十肩・五十肩に関して」です。

まず、四十肩・五十肩の医学的な正式名称は肩関節周囲炎というのですが、この名称が非常にわかりにくい病名となっております。
また、凍結肩ともいったりもしますが、これも正式に認められた名称ではありません。
ここでは四十肩・五十肩(ここから後は略して五十肩)という名称を使います。

五十肩は現代医学でも原因のわかっていない疾患です。
原因はわからないにも関わらず、なぜか40代、50代、60代前半くらいまでの人に、肩が痛くなって、肩の動きが悪くなる(可動域が悪くなる)病気です。
ただ、肩の関節の中で起こる変化はわかっていて、肩の関節の骨の周りは関節包という袋でつつまれているのですが、その袋が固まって分厚くなる(癒着)という変化が起こります。
そのため、肩の動きが悪くなってしまいます。

症状の経過としてはほぼ決まっていて、①まず痛い時期(炎症期)が来て、②その後肩が固まって動かなくなり(拘縮期)、③その後固まったのが解けて治っていく(寛解期)という流れになります。
この①から③までが、1年から3年かかると言われております。
治るまでが非常に長く、患者さんも辛い思いをすることが多い病気です。
たまに、40代、50代で肩が痛くなったから五十肩という方がいらっしゃいますが、厳密には違います。
痛くなって、固まって来るという典型的な流れであれば五十肩と診断し、一時的な炎症は五十肩とは考えず他の原因を探していくことになります。

肩が痛い場合には、レントゲンや超音波(エコー)やMRI等を撮影することがありますが、いずれの検査でも五十肩に典型的な画像所見はありません。
まず、レントゲンは骨しか確認できず、五十肩は骨に異常が起こる病気ではないため何度撮影しても異常なしということになります。
エコーやMRIでは、わずかに関節内に水がたまっていたり、腱板という肩を持ち上げたり、肩を安定化させる筋肉に炎症や変性(軽く傷んでいること)が見られたりすることもありますが、先述の通り典型的な所見ではありません。
そのため五十肩を診断するときは、画像所見は補助的なものにしかならず、問診や症状から診断していくことになります。

治療法としては、原因がわかっていない疾患であるため、試行錯誤しながら進めることになります。
まず①内服薬に関してですが、通常はロキソニンなどの一般的な薬や湿布から開始し、効果不十分であればトラマドール製剤などの一般的に強いと言われる薬などを処方していくことになります。

次に②リハビリですが、私はリハビリが最も大切な治療法と思っております。
身も蓋もない話ですが、五十肩は無治療で放置しても時間さえ経過すれば治る疾患ですが、無治療の人の中に1割程度肩の動きの悪さや痛みなどの後遺症が残る方がいらっしゃいます。
そのため、リハビリを行って肩の動きを改善させていき、痛みをとっていく必要があります。
リハビリは運動療法を主体に行いますが、通院でのリハビリ以外に自宅でのセルフトレーニングも重要になってきます。
当院では自宅でできるリハビリのメニューの指導も行うように心がけております。

③もう一つの治療法として注射という方法があります。
注射の内容は、局所麻酔とステロイドという炎症止めを混ぜたものを打ったり、ヒアルロン酸というものを打ったりします。
患者さんが炎症が強い時期にいるのか、固まっている時期にいるのか、肩がどのくらい動くのか、痛いのはどの部分かによって肩の中でも打つ部位を変えたりします(例えば、肩峰下滑液包や肩甲上腕関節内など)。
私の場合は、エコーを用いて、正確に打つ部位を調整するように心がけております。

患者さんは寝ているときの痛み(夜間痛)を訴えることが多いため、夜間の患部の保温や患部が下にならないように肩の下に枕を敷いたり、抱き枕を使用していただくなどの工夫を提案することもあります。
夜間痛のために不眠になる方もいらっしゃるため、やむなく睡眠薬を処方させていただくこともあります。

患者さんとは長いおつきあいになることが多く、励ましながら治療させていただくことが多いです。
一度改善傾向が見えれば、1ヶ月ごとに10°ずつくらい肩の可動域が良くなって来ます。

もしご自身が五十肩ではないだろうかと思われた方は、ぜひ一度整形外科を受診してみてください。
その際私からお願いしたいのは、五十肩は画像で特徴的な所見がないこともあり一度で診断がつかないこともあるため、何度か粘り強く受診してほしいということです。
そして、きちんとリハビリを中心とした治療を受けてください。
よろしくお願いいたします。

当院ホームページの診療案内の「肩が痛い」の項目日本整形外科学会ホームページの「五十肩(肩関節周囲炎)」の項目もご参照ください。

では、また!

うえだ整形外科クリニック 医師 上田英範